国際学会 参加についての報告

常勤講師 阿部 宏貴

 去る平成26年8月18日より23日まで、国際的な仏教学の学会International Association of Buddhist Studies (IABS)がウィーン大学にて開催されました。以下、その要旨を記します。
 IABSは、1978年にコロンビア大学にて最初の学会が開催されて以来、世界の仏教研究者の学際的交流の場となってきました。今回の学会は17回目。ウィーン大学といえば、インド哲学・仏教学の権威、故フラウワルナー(Erich Frauwallner)先生や、シュタインケルナー(Ernst Steinkellner)先生が教鞭をとったことで知られる、ヨーロッパの仏教学の一大拠点です。そのため、発表者・聴講者あわせて500名以上の参加となりました。
 智山伝法院の研究職では、種村隆元非常勤講師(大正大学講師)と筆者が参加してまいりました。
 種村先生は、三重大学・久間泰賢先生をチェアとするパネル「Reconstructing the History of Late Indian Buddhism」に参加されました。密教のサンスクリット文献が次々と校訂・解読されるなかで、密教学の中心地であったヴィクラマシーラ寺院の学僧たちの思想が明らかになってきました。種村先生は、ヴィクラマシーラ学僧の研究を牽引する学者の一人です。今回は、その成果として、密教儀礼に多数の著作を残した学僧アバヤーカラグプタ(12世紀頃)の思想について「Abhayākaragupta on Tantric Practice」が発表されました。パネルには多くの研究者が訪れ、世界的に大きく注目されている分野であることを改めて確認いたしました。
 一方筆者は、東京農業大学・山部能宜先生が率いる「Experience and Doctrine in Yogācāra」というパネルで発表しました。これまで瑜伽行唯識の研究は複雑な理論体系に研究的焦点が当てられてきましたが、ヨーガの実践から論理へという繋がりに注目すべきとの意図のもとで、6名の研究者によるパネル発表が行われました。
 このように、インド文献研究が主流の学会ではありますが、たとえば浄土宗総合研究所から浄土宗文献の英訳事業や、仏教の社会活動といった発表もあり、現代的な議論も大いに盛り上がりました。
 世界の仏教学の動向や、様々な研究者との交流を、今後も伝法院での研究に大きく還元していきたいと思います。