平成24年9月10日 第3回原発問題研究会 報告

常勤研究員 田村 宗英

 去る平成24年9月10日(月)、別院真福寺にて第3回原発問題研究会を開催しました。今回の研究会では、放射線や放射能という、よく耳にする事柄について理解を深めるため、その分野の専門家である、岐阜医療科学大学保健科学部放射線技術学科長の片渕哲朗氏を講師としてお招きしました。

 まず、片渕氏は、私たちの理解を促すために素粒子や原子などについて簡単に解説した後、一般的な放射線の定義は「大きなエネルギーをもつ粒の流れ」であると説明した。また、定義といっても、法律的な定義と科学的な定義が違うことについても言及した。
 引き続き、身近な放射線の話として、自然放射線について触れられた。放射線の量は岩石に含まれる放射性物質の量によって変わるため、日本国内でも地域差があると地図で示しながら説明された。その後、放射線の分類と種類、放射線と放射能の違いについて、図を用いながら話し、薪と炎を例に挙げて、薪が放射性物質・炎が放射線・薪が一秒間に燃える量を放射能(放射線が出す能力)であると具体的に解説された。そして、放射線の種類(α線・x線・γ線など)については、透過力が弱い放射線ほど人体に悪影響であると説明された。次に、放射線の問題点は、人間の五感では検出することができない点であるとし、きちんと検出するためには測定器を使用しなくてはならないが、測定器によっても値が違うため、何を目的として測定するのかを見定め、状況に適した測定器を用いるべきだと指摘された。
 休憩を挟んだ後は、被曝(ばく)について解説。
 「被曝」と「被爆」は、意味が混同されやすいが、「被曝」は人体が放射線にさらされること、「被爆」は原水爆による被害をうけたひとを意味すること、また、内部被曝と外部被曝の違いについて簡潔に述べられた。そして、人体の中でも放射線の影響を受けやすい臓器があることや発がんリスクについて、資料を提示しながら解説された。
 最後に、福島とチェルノブイリの原発事故を比較。福島原発事故の後に発生した風評被害についても取り上げ、様々な情報が飛び交う中であっても正しい情報を自らで判断することが大切だと述べ、講義を閉じられた。

 放射線・放射能については、福島の原発事故以来、メディアでも毎日のように取り上げられる話題です。これらについて、テレビやインターネットなどで簡単に情報が得られる環境に私たちはいますが、その情報が本当に正しいものかどうかを判断する必要があります。風評被害にみられるような悲惨な事例をなくしていくためにも、正しい知識を身につけていくことが欠かせません。
 片渕氏が「無用に恐れず、しかし侮らないことが大切」と仰っておられましたが、これは放射線・放射能に限らず全てに共通することでもあります。
 たくさんの情報が錯綜する今日、正しい知識をもとに物事を見極めてゆく姿勢が必要だと思われます。