平成25年2月18日 第7回東日本大震災報告・研究会 報告

常勤研究員 小宮 俊海

 去る2月18日午後2時より第7回東日本大震災報告・研究会を開催した。今回は、首都大学東京准教授の山下祐介先生をお招きした。先生の専門は、都市社会学・地域社会学・環境社会学で、特に限界集落の研究を進められてきた。震災以降は首都大学東京の研究者を中心とする「社会学広域避難研究会・富岡調査班」のメンバーとなり、東京電力福島第一原子力発電所に程近い福島県富岡町からの避難者の調査を続けてこられた。そこで、「福島県広域避難の今後について-富岡町の調査結果から-」と題し、ご講演いただいた。以下、その要旨を記す。

 原発事故以来、現在も避難生活を余儀なくされている住民の聴き取り調査をすると、アンケートのみでは汲み取ることのできない避難者の意識や、現実が浮き彫りになるという。例えば、アンケートで「自宅に帰りたいか」と問われれば、「帰りたい」と答える。
 しかし、実際には家族、職場、地域等の多くの問題をかかえ、帰るという選択はしない。また、原発反対運動についても、実際には直接的・間接的を問わず原発関連企業と関わりをもってきたことや、今後の経済的な見通しなどからも、一定の距離を取らざるを得ない者たちもいる。これらの点から、避難者の意識と現実を把握するには、長期的かつ多角的な調査が必要であるという。避難者支援行事等に出席する住民の声をメディア等で取り上げることもあるが、それらはごく一部であり、「隠れた避難者」の声に耳を傾ける必要があると述べられた。
 このように避難者はそれぞれに様々な意識を持っているが、区域再編という事態に直面すると、最終的には何らかの選択を迫られる。避難区域が解除される地域は、①帰りたいから帰る者と②帰りたくないけど帰る者は「現地再建」へ、③帰りたいけど帰れない者と④帰りたくないから帰らない者は「自主避難」へと生活を移すこととなる。また、帰還困難区域は、⑤帰りたいけど帰れない者も⑥帰りたくないから帰らない者もどちらも「強制避難」が続くのである。このように六種の異なった事情を持つ避難者が誕生することとなる。そうなると、地域社会が完全に解体されてしまい、国や自治体等が保障や支援を進める際にも困難さが伴うという。

 また現在、山下先生は、「とみおか未来子供タウンミーティング」のメンバーとしても活動されており、分断された地域の再構築を目的として、避難者と自治体・国とのタウンミーティングを開催している。それを通して、今まで見えてこなかった自治体が抱える課題も見えてきているという。避難者と国・自治体の関係の基本的構造は、国は町を選び住民を選ぶことができ、住民は町を選べるが国を選べない、町は国も選べないし住民も選べない―こうしたある種の主従関係が成立する。このなかで、もっとも弱い立場にある自治体は、経済的理由等で帰還せざるを得ない老人や生活弱者を多く抱えることになる。

 以上のように、避難者の意識と現実、また地域再建の今後にはまだまだ多くの問題が山積している。今なお終息を見ない原発事故の避難者たちとその地域の現実的な問題を、充分に考えていく必要性を再確認した。